30 分のシーンを3 回繰り返すという特異な構造を持つ、東京デスロック「再生」
劇団バージョンと共に、東京デスロック主宰・多田淳之介さんの演出による2週間の滞在制作を経て行う長久手バージョンを
上演!

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お知らせ


概要

北九州芸術劇場×三重県文化会館×長久手市文化の家
地域の演劇文化を支える3つの劇場が、コロナ禍で果敢に挑む大型滞在制作プロジェクトがスタート!!

2006年初演、当時の社会問題であった集団自殺をモチーフにしながら30分の物語を3回繰り返すという特異な構造で、決して再生できない“時間”や今ここにある“生”を克明に描き出した演劇界のエポックメイキング作を5年ぶりの再演+北九州、三重、長久手、それぞれの地域の出演者との現地滞在制作バージョンと同時上演!!!先の見えないまま進み続ける2020年代、それでも生きていく私たちのリアルな時間、リアルな身体がここに在る。
ツアー情報[東京デスロック「再生」劇団+現地バージョンツアー]
《北九州》2022年7月9日、10日 北九州芸術劇場
《三重》2022年7月23日、24日 三重県文化会館
《長久手》2023年2月25日、26日 長久手市文化の家
★東京デスロック『再⽣』劇団+現地バージョンツアー特設サイト ★

公演詳細

公演日時2023 年2 月25 日(土)、2月26 日(日)
13:00 長久手Ver / 17:00 劇団Ver  (両日とも)
会場長久手市文化の家 風のホール
出演【劇団Ver.】夏目 慎也、佐山 和泉、原田 つむぎ、松﨑 義邦(以上 東京デスロック)、岡田 智代 、波佐谷 聡、田中 美希恵
【長久手Ver.】岩田 千鶴(gateau au fromage)、太田 竜次郎(劇団エンジン)、小川 敦子、髙木 梨帆、田坂 歩、手代木 花野、福田 健人
主催長久手市

公演レポート

東京デスロック「再生」。2006年の初演後、演劇界のエポックメイキング作となった作品である。その後、幾度かの再演を踏まえ、2022年、劇団だけでなく北九州・三重・長久手それぞれの現地にて選出されたメンバーにて上演するという、挑戦的な企画として帰ってきた。
クリエーション期間から本番までの軌跡を、レポートとしてたどる。

【クリエーション期間】

3都市ツアーという形式で始まった東京デスロック「再生」。長久手はその最終地となる。2022年11月中旬に行われたオーディションでは37名もの応募があり、その中から7名の出演者が選ばれた。先に行われた北九州では全員20代、三重では全員女性。そしてここ長久手では男女17歳から41歳の男女、居住地も関東から関西までと実に様々なバックグラウンドを持ったメンバーが揃った。

既存の台本がなく、その時々のメンバーや社会情勢を元に作られるこの作品は、出演する役者によって多種多様な色を見せる。今回のメンバーは年齢や出身地、長久手の浸透度もバラバラ。さらに先に開催された2都市の上演からは半年以上の月日が経過しているため、社会情勢も変化している。リニモとはなんだ?ジブリはどうだ?ひつまぶしを食べるならどこだ?など、様々な県外メンバーからの質問にスラスラと答える愛知県民(元県民)。
とにかく常に会話と笑いが絶えない稽古場の中で、他愛のない会話が、作・演出の多田さんの手によって台詞となり、要素となり、みるみるうちに作品が紡ぎ出されていく。まるで音楽のセッションを見ているようだ。役者同士はお互いについての理解を深めながら、作品の成功という共通の強い気持ちを確固たるものとしていく。2週間前まで顔も知らなかった7人とは、とても思えない団結力。そしてそれは同時に、公演の成功とともに終了を迎える、まるで「再生」本編のような儚さをもって本番へ向かっていくのだった。

 

【公演】

そしてついに迎えた本番。過去2回のツアー公演情報やSNSでの噂が影響し、本番一週間前から予約が急増、会場はほぼ満席となる。

舞台上には、懐かしいおもちゃや長久手ならではのキャラクターのぬいぐるみ、酒瓶、そして膨大な量のゴミ袋など、所狭しと詰め込まれている舞台装置はそれだけでも迫力があり、今から起こりうる「その時」を彷彿させるようだ。

まずは13時から長久手バージョンが始まった。
現地バージョンでは、出演者同士が踊ってるときも話してるときも、常に周囲の人間と関係を持とうとしている様子がうかがえてとれる。それ故の脆さ、若さ、儚さが顕著に感じられ、それが故のまぶしさが、ずっしりと響いてくる。こんなにも誰かを感じているのに、それでも死を選んだ7人が、舞台上で輝いている。間もなく死を迎える7人から感じるのは、眩しく痛いくらいの”生”そのものなのだ。
そして、それを伝えているのは『「再生」を創り上げる』という同じ目的のために集まった7人なのだ。目的は違えど「再生」と同じようにして集まった彼らは、同じように、共通の目的に向かって全力で突き進んでいるのだ。

 

そして17時からは劇団バージョンの上演。
同じ日程に劇団バージョンも見ることができ、現地バージョンと比較しながら楽しむことができるのが、本ツアーの魅力の一つだ。

実際に始まってみると、構造は同じであるにも関わらず、印象は全く異なる。
劇団バージョンは、ツアー3都市目ということもあり、完成度の高さ、役者の表現力の高さに圧倒される。それはまるで、緻密な技の光る伝統芸能のような、雪の結晶のような。とにかく、美しい。その完成度の高さは「再生」という作品の衝撃をより確固たるものとさせているように感じた。

そして両バージョン共通しているのは、3回繰り返される舞台上でのスタッフワークである。

1回目は照明もあまりはっきりせず、人がいるのがようやく確認できる程度。2回目になり、全体が見えてくる。3回目はまぶしいくらいの照明と、台詞もかき消されるくらいの音楽。この繰り返しの中で、観客はその各回での見方をし、自身の中でそれぞれの「再生」が完結を迎えるのだ。そして、その結末は、想像を超えた衝撃を与える。

両バージョン、終演後は拍手が鳴り止まず、カーテンコールが続いた。中には、現地バージョンだけ予約をしていたが、劇団バージョンも見たいとチケットを当日券を購入する方も。SNSでも感動の声が飛び交い、アンケートにも「最初から最後まで人の命の輝く瞬間を感じた。本当に素晴らしいものを見せてくれた。」「涙が止まらなかった」「素晴らしいクリエーションだった」などのコメントが寄せられ、その衝撃は東海の演劇界を騒然とさせていた。

こうして「再生」3都市ツアーは、長久手という地で、終焉を迎えた。

どの都市でもとてつもない衝撃をもたらした「再生」。この衝撃をもたらしてくれた東京デスロックの皆様、スタッフの皆様、演出の多田淳之介さん、そしてクリエーションを駆け抜けてくれた出演者の皆さん、本当にありがとうございました!

 


チラシ

 

チラシデータ(おもて)

チラシデータ(うら)

 


プロフィール

多田 淳之介 (写真:©平岩享)1976 年生まれ。神奈川県出身。演出家。東京デスロック主宰。古典から現代戯曲、ダンス、パフォーマンス作品まで幅広く手がけ、現代社会に於ける当事者性をアクチュアルに問い続ける。公共ホールや自治体、フェスティバルなどのアートディレクターを歴任し、全国の学校や文化施設での創作やワークショップ、韓国、東南アジアとの国際共同製作など幅広く活動する。2014 年韓国の第50 回東亜演劇賞演出賞を外国人として初受賞。東京芸術祭共同ディレクター/ ファームディレクター。四国学院大学、女子美術大学非常勤講師。

東京デスロック(写真:©bozzo)多田淳之介を中心に 2001 年より活動開始。大都市集中型ではない活動を目指し2009 年より東京公演休止を宣言。2011 年より「地域密着、拠点日本」を宣言し、全国の地域で活動する劇場や劇団とのコラボレーション、ヨーロッパ、アジアでの公演など国内外問わず活動する。韓国の第12 言語演劇スタジオとは 2009年以来共作を続け、2014 年には『가모메 カルメギ』が韓国で最も権威のある東亜演劇賞を受賞。近年では舞台と客席の境目のない体験型の作品も多く、様々な演劇的手法で観客との“現在” の共有を目指している。

長久手Ver.出演者

岩田千鶴(gateau au fromage)
愛知県出身。大学で演劇部に入部して演劇を始める。名古屋演劇教室の初心者のための演劇ワークショップに参加し、修了後、フリーで役者や音響として活動。2017年に個人演劇ユニット、gateau au fromageを立ち上げ、演出としても活動開始。カミハマ演劇研究所第一期研修員。

太田竜次郎(劇団エンジン)
1982年生まれ。愛知県豊田市出身。高校時代に市民劇などに参加し、その後富良野塾(19期生)に入塾。卒塾後は地元に戻り役者・スタッフなどで活動。近年はとよた演劇祭(第1〜3回)の企画・運営や長久手文化の家アートスクール「戯曲セミナー」(15〜18年)で活動。小学校などで学芸会指導やワークショップを行う。

小川敦子
岡山県出身。大学時代に声楽を学び卒業後に演劇を始める。2018年よりソロユニット「堂々としたブスはほぼ美人」を始動。一年に一本は作品をつくるという目標を立てるもサボりがち。近年の出演は平泳ぎ本店『俳優の魂/贋作 不思議の国のニポン演劇盛衰史』、倉田翠『今ここから、あなたのことが見える/見えない』など。

髙木梨帆
愛知県出身。中学卒業後、演技の勉強を始める。今回がはじめての舞台。趣味は食べること、大好物はあんこと塩にぎり。前髪を切ることが得意。「プライドを捨て、最後まで自分らしく精一杯挑んでいきます。全力でがんばります。」

田坂歩
愛知県出身。多摩美術大学在籍中。幼少より様々なダンス経験を積む。その後大学にて柴幸男(ままごと)ゼミに所属し演劇を修学。2020年より俳優業を開始。主な出演作にCHAiroiPLIN踊る戯曲「三文オペラ」(B・ブレヒト作/スズキ拓朗演出) 東京芸術劇場「カノン」(野田秀樹作/野上絹代演出)等がある。

手代木花野
宮城県出身。コンタクトインプロヴァイザー。長塚圭史、野田秀樹、ウォーリー木下、カンパニーデラシネラ、柴幸男、維新派、伊藤キム等の作品参加。愛知では「千と千尋の神隠し」(ジョン・ケアード演出)、「新・三人姉妹」(小池博史演出)出演やコンタクトのWSを行っている。都立総合芸術高校演劇専攻特別専門講師。

福田健人
2002年生まれ。大阪府出身。高校で演劇部に入部し、3年時には春季全国高校演劇大会に出場。2022年からはフリーで本格的な演劇活動を開始。主に役者として京都で活動をしている。演劇だけでなく、ダンスやアクロバットなどの身体表現も得意としている。

 

長久手Ver.出演者オーディションの詳細はこちら

【現地Ver.出演者決定!!】東京デスロック「再生」劇団+現地バージョンツアー 長久手バージョン